授乳中の歯科治療(1)

授乳中のお母さんの診察時に、時々「お薬を飲む場合、授乳は中止しなければなりませんか?」と質問されることがあります。
母乳は吸わせないと分泌が減り、それを契機にせっかくの母乳育児をあきらめることになりかねません。ご存じのように母乳は赤ちゃんにとって最も適した栄養源であるばかりでなく、スキンシップをはじめ様々な利点が母子双方にあります。
自分にももうすぐ1歳になる息子がおり、こういったお母さん方のお悩みは良く分かります。
本日から数回に分けて、授乳中の歯科治療について、その基本知識を含め、考えていきたいと思います。
まず初めに、薬物が母乳に移行する仕組みを考えてみましょう。
母乳の材料は血液です。母親が薬を飲むと、吸収された成分は血液中に分布しますが、分子量が小さく、脂に溶けやすく(脂溶性)、アルカリ性のものは母乳に溶けやすくなります。
血液中のタンパク質に溶けやすい薬は母乳に溶けにくいため移行しにくくなります。これらの性質を考慮して、我々は薬を処方することになります。(つづく)