妊娠中の歯科治療(3)
今回は、妊娠中の歯科治療の第三回目として、胎児への薬剤の影響について述べたいと思います。
妊婦の方にとって、薬剤を服用する事は、胎児への影響が心配ですよね。特に胎児の奇形発生については、妊娠のどの時期にその薬を服用したかが重要になります。
①受精前から妊娠3週末まで
受精後2週間以内に影響を受けた場合には、着床しなかったり、流産して消失するか、あるいは完全に修復されて健児を出産します。この時期の投与は、風疹生ワクチンなど、残留性のある薬剤以外は考慮する必要はありません。
②妊娠4週~7週末まで
この時期は、中枢神経・心臓・消化器・四肢などの重要臓器の発生があり、薬剤による胎児奇形に関して最も注意が必要な時期になります。特にホルモン剤、ワルファリン(抗凝固剤)、向精神薬、脂溶性ビタミン(A、D)などが要注意です。
③妊娠8週~15週末まで この時期は胎児の主な器官形成は終了していますが、性器の分化や口蓋の閉鎖などは終了していません。②の時期に比べると薬剤による胎児の影響は少なくなりますが、なくなるわけではありません。
④妊娠16週~分娩まで
この期間は薬剤による奇形発生はありませんが、胎児の機能を抑制するような薬剤に対しては注意が必要です。たとえば、抗甲状腺薬を過量に服用した場合は、胎児が甲状腺機能低下症となる危険性があります。また、歯科治療においてもよく出される、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID。ロキソニン、ボルタレンなど)は、胎児の動脈管(胎児心臓のとても重要な血管)を閉鎖してしまう可能性があり、要注意です。
前回にも申し上げましたが、妊娠中の不必要な薬剤の使用は厳に慎むべきなのは言うまでもありませんが、薬剤の使用を極端に恐れるあまり、治療上必要な薬剤の投与を中止してしまう事は、妊婦にも胎児にも不利益となります。